第67回(公社)全日本鍼灸学会学術大会 大阪大会 健康・長寿を支える鍼灸学ー新たなるエビデンスとナラティブへの挑戦ー

同大会にて、認知症に対する鍼灸治療の講演と実技を、約3000人の参加者の前で、吉村春夫先生とセッションさせていただきました。

実技セッション5
「高齢者鍼灸(認知症)」
司会:近藤 哲哉 (関西医療大学保健学部 教授)
「認知症に対する擦過鍼治療」
吉村 春夫 (公益社団法人大阪府鍼灸師会 理事)
「認知症に対する東洋はり医学会関西STYLEの鍼灸治療」
中野 正得 (一般社団法人東洋はり医学会関西 会長)

次演者席に座らせていただいたお陰で、吉村先生の擦過鍼を間近で見ることができ大変勉強になりました。
先生の抄録に、擦過鍼の優しい心地良い摩擦する音と刺激が気分を落ち着け、記憶を呼び起こすことで、介護保険本来の目指す「意欲を持って自立し、活動、参加していけることを目標とした支援」の推進力になり得るのではないだろうかと書かれておられますが、正にその通りだと思いました。
吉村先生の素晴らしい講演実技の後を受け、東洋医学から見た認知症の病因病理と認知症予防に対する宮脇奇経治療の実技を披露させていただきました。
認知症に対する(一社)東洋はり医学会関西STYLEの鍼灸治療
認知機能の生理
認知症は脳の病気ですが、脳が納まる頭部は人体の最も高い位置に在ります。
自然界で言えば最上位には天が在り空が在ります。
東洋医学では、自然界を大宇宙とします。
人体を小宇宙とします。
大宇宙の出来事は小宇宙の出来事として投影されます。
人体は自然界の縮図です。
自然界の一番上に在る天空と人体の一番上に在る頭脳には同じような働きが有ると考えます。
雲一つない晴れ間が広がった空はスッキリとして気持ちが晴れやかになりますが、同じように頭脳も澄んでいれば思考・判断・記憶などが順調に発揮されます。
このような状態であれば認知機能は健やかとなります。
これを【穢れなき天空】とか【穢れなき天空機能】とします。
穢れなき天空機能が認知機能を保持増進します。
認知症の病因病理
何らかの原因でこの穢れなき天空機能が維持できなくなると認知機能が衰え、認知症を発症します。
空が曇れば淀むように、頭脳も曇れば淀みます。

穢れなき天空機能が失調する原因は大きく分けて2つあります。
  1. 【清陽】が頭脳に不足すると穢れなき天空を形成できません。
  2. 【濁陰】が頭脳に混入すると天空が穢れます。
清陽と濁陰
私たちの体には、体にとって必要なものと要らないものが混ざりあって循環しています。

体にとって必要なものを【清】とします。
体にとって要らないものを【濁】とします。

清は陽の性質を有します。
陽の性質は上昇拡散です。
合わせて【清陽】は上に昇って頭脳を養います。
清陽は上昇↑と覚えてください。

濁は陰の性質を有します。
陰の性質は収斂下降です。
合わせて【濁陰】は下って大小便となり体外へ排泄されます。
濁陰は下降↓と覚えてください。

穢れなき天空の形成
この内、清は混じりけのない一点の曇りもない純度の高い気です。
この清陽が上昇して頭脳に充たされることによって、穢れなき天空が形成されます。
雲一つない晴れ間が広がった澄んだ青空のように、頭もスッキリとして思考・判断・記憶が順調で認知機能は衰えることはありません。あるいは年相応に推移します。

穢れなき天空の形成、穢れなき天空機能の保持増進には、頭脳に清陽が必要不可欠です。
清陽不足
ということで清陽が不足して頭脳に昇れないと穢れなき天空が形成できません。
認知機能が衰え、認知症を発症します。

濁陰混入
本来であれば、横隔膜から上には清陽しかなく濁陰は昇ることができません。
降りるべき濁陰が降りられずに清陽と共に頭脳に混入する天空は濁って穢れます。
天気が崩れると空が曇って気分が淀むように、頭脳も曇って淀みます。
天気が穢れるために、認知機能が衰え、認知症を発症します。

清陽不足と濁陰混入の病因病理
五臓の失調です。
外因(異常気象)、内因(ストレス)、不内外因(飲食労倦)によって、私たちが生きていくために必要な5つの大切な働きが失調すると、生命力が低下し清陽不足や濁陰混入を招きます。
その結果、認知症を発症します。
経絡治療
主たる変動経絡の虚実を弁え補瀉調整し生命力(自然治癒力、免疫力)を強化することを認知症の治療と予防の第一とします。
宮脇奇経治療
第二の経絡治療である宮脇奇経治療を補助療法とし、穢れなき天空の改善に努めます。
宮脇奇経治療の特徴は、
  1. 即効性があります。
  2. 診察診断さらには治療が簡便です
  3. 再現性があり誰でもできます。
以上の理由から海外では「Miyawaki Style」と呼ばれ大人気です。

認知症に対しては、督脉が関係します。
督脉は頭脳を流注しており、督脉を使えばダイレクトに穢れなき天空を改善することができます。
治療穴は、
左の後谿と、
右の申脉です。
今回は、この後谿-申脉のエビデンスを実証するために2軒の施設にご協力いただきました。
ケアビレッジたから様、御坊シルバーハイム様、ご協力いただきありがとうございました。
この場をお借りして御礼申し上げます。

方法
先ず入居されている方々やデイサービスを利用されている方々に、長谷川式認知機能テストを実施しました。
30秒間で12個の単語を暗記していただきます。
その後、30秒で次のイラストから選んでいただき、いくつ覚えているかをテストしました。
正解率の平均が31%でした。

今度は、左後谿-右申脉に奇経テスターを貼付して、別の単語を使って同じテストを実施しました。
以下結果です。
テスタ-を貼る前は正解率が31%だったのに対して、テスターを貼付後は60%にupしました。
鍼灸師ができること
認知症には、脳の神経細胞が壊れることによって直接起こる【中核症状】と、
周囲の人との関わりのなかで起きてくる【BPSD(行動・心理症状)】があります。
介護者が苦慮することが多いのはBPSDです。

BPSDの温床となるのが、認知機能の更なる低下です。
今までできていたことができなくなる。
これを認知症の患者さんは失敗とか挫折として捉えます。
認知症でない方であっても失敗や挫折は辛いものです。
認知症の患者さんはストレスへの耐性が落ちているため失敗や挫折を繰り返す度にどんどんどんどんBPSDが深刻になってきます。

医療介護の現場では、失敗する前に介助する支援が推奨されています。

例えば、認知症の患者さんはトイレに入ります。
何をしにトイレに入ったのかを覚えていません。
便座を上げていいのか下ろしていいのかが分かりません。
用を足した後流すことが分かりません。
等々、トイレに入って出てくるまでに30分以上かかっても不思議ではありません。
その1つのできなかったこと、失敗挫折にショックを受け、BPSDを悪化させます。

なので、介護者がトイレに一緒に入って一連の動作手順を先に指示して失敗させないように介助するというのが、失敗する前に介助する支援です。

ですが、これがいかに大変なことかは容易に想像がつきます。
施設であれば、施設の職員さんが、認知症の患者さん全員について回ってこの支援をするなんていうのは想像を絶する過酷さです。
誰もができることではありません。
介護の現場で働いてる方々には本当に頭が下がる思いです。

認知症を治すのは、東西の医学を問わず並大抵のことではありません。
私たち鍼灸師にできることは少しでも症状を和らげることや予防に尽きます。

長年鍼灸治療をしていると、10年前と運動機能、認知機能が余り変わっていない高齢者の患者さんがよくおられますが、定期的な鍼灸治療が何より予防効果があります。
未だ病まざるを治すです。

本日の吉村先生の擦過鍼治療や私が披露させていただいた宮脇奇経治療は、明日から直ぐに採り入れられる誰でもできる治療法です。

みなさんを頼って来られる患者さんやみなさんのまわりの大切な人たちの運動機能と認知機能の保持増進に役立てていただければ幸いです。

おわりに
今回このような機会を与えてくださった、大会実行委員長の尾崎朋文先生、コーディネーターとしてお世話いただきましたプログラム委員長の坂口俊二先生、そして実行委員のみなさまには、心より感謝申し上げます。
どうかお疲れが出ませぬようお祈り申し上げます。
また、司会をしていただきました近藤哲哉先生、ありがとうございました。
そして、宮脇優輝先生を始め、本会会員のみなさま、応援していただきありがとうございました。
とっても心強かったです。

はり・灸・小児はり 中宮院 OFFCIAL OWND

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